「お腹の傷は、君が命懸けで光莉と陽太を生んでくれた証だ。萌が気にするのなら見ないようにするし触れないようにする。でも俺はその傷ごと君を愛してる」

嘘偽りない本心だ。男にはきっと耐えられないような痛みを乗り越え、彼女は母親になった。傷はふたりの宝物を守ってくれた印であり、深く感謝こそすれ不快に思うはずがない。

だからなにも心配する必要はないのだと伝えると、萌は泣きそうな顔で微笑んだ。

「私……晴臣さんと出会えて、本当に幸せです」
「萌」
「全部、触れてください。私に、晴臣さんをください」

普段はあまり自分の要望を口にしない萌が、晴臣を求めている。楚々とした雰囲気を纏ったまま、晴臣が惹かれた聡明な眼差しをこちらに向け、触れてほしいと言葉にした。

その威力は絶大で、晴臣は思わず「ほんとうに、君は……」と天を仰いだ。