自分を責めそうな萌の唇を人差し指で制し、晴臣はポケットに忍ばせておいた指輪を取り出した。萌の左手をそっと握りしめると、彼女の細く美しい薬指に石付きの指輪を滑らせ、恭しく唇を寄せた。

「出会ってからずっと、君だけを愛してる」

初めは同情や打算的な考えで結婚を提案した。正直に言えば、いずれ結婚しなくてはならないのだから、うまくやれるのなら誰でもいいと思っていた。

けれど、それは萌に出会うまでの話。理知的な光を宿す瞳を見た瞬間、彼女だと直感したのだ。それは一緒に暮らし、ともに過ごす時間が長くなればなるほど確信に変わる。

「萌。俺は君が思っているよりも、ずっと萌のことが好きだよ」

自分よりも人を思いやれる優しさも、その優しさからくる強さも、ずっとひとりで耐えてきたからこそ他人に甘えられない不器用さも、全部が愛おしい。

そばにいても、離れていても、晴臣の中の彼女の存在は決して薄れなかった。

心の中を曝け出すように伝えると、萌は頬を上気させ瞳が潤みだす。