いくら結婚の提案に頷いたとはいえ、初対面の男の家に住むなど警戒して当然だ。少しでも安心して落ち着いてほしいと、晴臣は自分の好物でもあるホットチョコレートを淹れた。

「もちろん覚えてるよ。たしか少量のブランデーを入れてたせいですぐに眠ったんだよね」

頷いて情報を補足すると、恥ずかしそうに目を伏せる。

「正直、あの時は自分の選択が正しかったのかわからなくて、不安でいっぱいでした。そんな時、晴臣さんが作ってくれたホットチョコレートが本当に美味しくて安心したんです。あれ以来、チョコレートが大好きになりました」
「甘党も、たまには役に立つな」

肩を竦める晴臣に、萌はおかしそうに声を上げた。

(この笑顔を、生涯そばで守っていくんだ)

可愛らしくクスクス笑う彼女を、晴臣は目を細め愛おしさを隠さずに見つめた。

「改めて、誕生日おめでとう。萌」
「ありがとうございます。本当にすごく嬉しいです」
「ご両親の代わりに毎年祝うと言っておきながら、約束を果たせなかった」
「いえ、それは私が……」
「今度こそ受け取ってほしい」