「君が謝る必要はないよ。彼女たちの君に対する言葉の数々は、身内の謙遜にしても聞くに耐えないものだった。俺だけじゃなく両親も同じ気持ちのはずだ。俺達の前でもああいう発言が飛び出すということは、普段から酷い扱いを受けているんじゃないか?」
「それは……」

唐突にプライベートな部分に踏み込まれ、萌はたじろいた。

初対面の、それも秋月工業の取引先の御曹司相手にどう話したらいいのかわからず、萌は口を噤む。

するとその様子を見た晴臣が一歩進み出て、萌との距離を縮めた。

「父が君の父上と親しかったようだし、この見合いで身上書ももらっているから君の事情はわかっているつもりだ。早くに両親を亡くして、あの一家に引き取られた。そして今も君は彼らと生活を共にしている」
「……はい」

その通りなので頷く。

「今日の君たちを見ていれば、とても健全な関係とは思えない。まさかとは思うが……その髪も?」

鋭い指摘に、萌は酷い髪色を隠すように手で頭を覆った。