「ありがとうございます。両親のお墓参りにみんなで行けたのも、こんなに素敵な部屋を予約してくださったのも、すごく嬉しい」
「よかった。あとでみんなで下の中庭にも下りてみようか」
「ふたりが公園と勘違いして大騒ぎしそうです」

そう言いながらも、萌は嬉しそうにはにかんで頷く。彼女の表情を見て、自分の考えは間違っていなかったのだと安堵した。

ひとしきり部屋の探検を終えて疲れた双子が昼寝をしている間に、頼んでいたバースデーケーキを運んでもらった。

「わぁっ……! ケーキまで用意してくれたんですか?」
「もちろん。ふたりには悪いけど、今のうちに食べようか」
「ふふっ、まだあの子たちには早いですからね。すごく美味しそう!」

いちごやラズベリーで彩られたホールケーキの中央には〝Happy birthday〟と書かれたプレートが乗り、その周りにチョコレートでできた小ぶりな四輪のバラが飾られている。

「シンプルなショートケーキと迷ったんだけど、チョコレートの方が好きかと思ってガナッシュケーキにしたんだ。萌が俺に作ってくれたケーキには敵わないけど」
「まさか。比べちゃだめですよ。あの時初めて作ったんですから」
「だからだよ。あれ以上に美味しいチョコレートケーキはいまだに食べたことがない。きっとこれからも越えられないよ」
「晴臣さん……」