今日は萌の両親の命日でもあり、彼女の誕生日でもある。
『ご両親の代わりに、これからは俺が毎年君の誕生日を祝うよ』
三年前にそう告げたにもかかわらず、翌年は約束を守ることができなかった。
だからこそ誕生日を目前に再会できた今年こそは、過去の分も含めて祝いたいと思っていたのだ。
「わぁー! ひろーい!」
「しゅごーい!」
最上階のひとつ下の階にあるインペリアルファミリースイートルームに着くと、双子は探検するように部屋中を走り回り始めた。
「あの、このホテルって」
「うん。俺たちが見合いした場所だよ。萌の誕生日をどう祝おうかって考えたら、きっとプレゼントを贈るよりも家族で過ごす時間が一番喜んでくれるんじゃないかと思って」
ハイブランドのバッグでも高価なジュエリーでも、それこそ車やマンションだって萌が望むならプレゼントしたいが、きっと彼女は望まないだろう。高級レストランのディナーで祝おうにも、双子のことを考えるとまだ難しい。
それならば周囲に気兼ねなく美味しい食事を家族四人で楽しめるようにホテルの部屋を予約し、レストランのディナーをルームサービスで届けてもらおうと考えた。