まさか自分に与えられていた部屋がそのまま残っているとは思わず、離れていた三年間も萌を諦めていなかったという彼の言葉が脳裏に蘇る。

しかし、変化している部分もある。

ダイニングテーブルには二脚のキッズチェアが用意されており、キッチンにはゲートが設置されている。さらにリビングの一角にはジャングルジムと滑り台が一体となった室内遊具も置かれていた。

きっと色々と調べて用意してくれたのだろう。細やかな気配りのできる晴臣らしい優しさだと嬉しくなる。

「わぁ! しゅー、ありゅ!」

滑り台を見て一気に覚醒した陽太とは対象的に、光莉は萌にぴったりとくっついたまま警戒を解いていない。

「すべってもいいよ」
「やったぁ!」

許可が出た瞬間、陽太はジャングルジムによじ登り始めた。まだおぼつかないため、転落しないようにスーツのジャケットを脱いだ晴臣がそばで見守ってくれている。