「優しくて、頑張り屋で、甘えるのが苦手な子だ。大切にしてあげてほしい」
「はい。必ず。私の一生をかけて、三人を幸せにすると誓います」

娘を思う父親のような眼差しを正面から受け止め、晴臣が大きく頷いた。

「萌ちゃん」
「……はい」
「今の僕の言葉は、きっと秋月が言いたかった言葉だと思う。君が幸せになること。それが僕らにとっても、君のご両親にとっても、恩返しになるんだよ」
「社長……ありがとうございます」

溢れる涙を堪えきれず、萌は深々と頭を下げた。膝の上でぐっと組んでいた手に、ぽたぽたと大粒の涙が落ちる。

失意のどん底でこの場所にたどり着き、田辺たちの優しさにどれだけ救われただろう。

幸せになることが恩返し。

もし本当にそうなのだとしたら、これからたくさんの恩返しができるはずだ。

愛する人に愛され、彼との間に生まれた宝物を慈しみ、ずっとそばで生きていく。これ以上ない幸せの予感に、震えるほどの喜びを感じた。

「私、社長や理恵さんによくしていただいて、今までも幸せでした。でも、もっともっと幸せになります。必ず」

顔を上げ、溢れる涙もそのままに宣言すると、膝の上で握りしめていた萌の手に晴臣の大きくて温かい手が重ねられた。

彼とともにつくる家庭は、この手のようなぬくもりに溢れているに違いない。そう思えた。