すると、晴臣の優しい声が頭上から落ちてきた。

「俺はそんなに頼りないかな」
「……え?」
「萌が言う〝迷惑〟なんて、君を失う苦しみに比べればなんでもない。たとえあの一家がなにをしてこようと、俺も会社も少しも揺らがないよ」

萌の考えなどお見通しだと言わんばかりのセリフに顔を上げると、吸い寄せられるように彼の瞳を見つめた。その眼差しには一点の曇りもない。

「秋月社長がなにか言ってきても無視を決め込めばいいし、彼らが逆恨みして萌や子供たちに手を出そうとするのなら、俺が全力で守るよ。もちろん手は打ってある。それに俺の両親には、萌と再会したこと、君が結婚直前で姿を消した理由、双子の存在、すべて話した上で今必死に口説いている最中だと伝えてある」
「え……っ?」
「勝手なことをしてごめん。でもどうしても俺が本気だと知ってほしかったんだ」

萌が絶句していると、彼は勝手に双子の存在を明かしたことを謝りつつ、晴臣の両親は萌との結婚を心待ちにしているのだと語った。

「なにも心配はいらない。だから、萌の気持ちを聞かせてほしい」

萌と家族になりたいと訴える晴臣の熱情が、萌の不安を溶かしていく。