「きっと大変なのは今だけじゃない。妊娠中のお腹の大きな萌を支えたかったし、生まれたての光莉と陽太の世話を一緒にしたかった」
「ごめんなさい、私……晴臣さんの父親としての権利を奪ってしまって……」
「違うよ、責めてるわけじゃない。むしろ俺が君の本心に気付かなかったせいで、今の現状を招いているんだ。萌はなにも悪くない」

萌が自分を責めそうになるのを早口で遮ると、晴臣はそっと片手を伸ばして萌の目元に触れた。

「今日一日君たちと一緒に過ごして、より家族になりたいという思いが強くなった。これからはずっと俺がそばにいる。だから、泣いてもいいんだ」
「晴臣さん……」

隣の晴臣を見上げると、彼もまた泣くのを我慢しているような眼差しを萌に向けている。

「たくさん頑張ってくれてありがとう。これからは、君の宝物を俺にも一緒に守らせてほしい」

目元や頬に触れていた手で肩をぐいっと引き寄せられ、彼の胸に抱きしめられる。三年前と変わらぬ温かさに、ついに萌の涙腺は崩壊した。ぽろぽろといくつもの涙が頬を伝い、晴臣の肩口を濡らしていく。

「萌の気持ちが追いつくのを待つと言ったのに、ごめん。でも君が泣きたい時に、一番近くにいられる存在になりたいんだ。俺と結婚しよう。今度こそ必ず幸せにしてみせる」

今度こそ、と彼は言うが、三年前だって幸せだった。

初めて恋した人と想いを通じ合わせ、女性としてこれ以上ないほど大切にされる日々は、時々怖くなるほど幸福感に満ち溢れていた。