「すごいな、同じ向きで寝てる」
「双子あるあるですね。たまに寝返りも同じタイミングでしますよ」

少し歩く速度を落としてベビーカーを押す晴臣は幸せそうな顔でふたりの寝顔を見つめていて、双子を大切に思う温かい眼差しは慈愛に満ち溢れている。

この光景を何度も夢に見た。

もしもあの時違った選択をしていれば、こうして四人で出掛けるのが日常だったかもしれない。

本来なら何度も見られたはずの数ある〝双子あるある〟を、彼は知らない。それを知る機会を奪ったのは、萌が自ら下した決断だ。

そして双子から父親を奪ったのもまた、彼らの母親である萌なのだ。

だからここで泣くのは筋違い。切なくて、苦しくて、けれど今こうしているのが信じられないほど幸せで、感情がぐちゃぐちゃになって涙がこみ上げてくるけれど、自分には泣く資格などない。

必死に唇を噛み締めて、晴臣に気付かれないように隣を歩く。

すると、彼は小さな声でぽつりと呟いた。

「双子用のベビーカーは重いし、ふたり分の荷物もこんなにたくさんあって大変なのに、これをずっとひとりで頑張ってたんだな」

彼が歩みを止める。萌もつられるようにその場で立ち止まった。