「うん、やっぱり美味しい。だし巻きにほうれん草を入れてるんだな。こっちのハンバーグも?」
「ほうれん草はお浸しにすると噛んで飲み込むのが難しいみたいで、これなら食べてくれるんです。特に陽太が野菜の好き嫌いが多くて」

萌はおいしそうにハンバーグを食べている陽太に聞こえないように「ハンバーグには陽太の嫌いなピーマンをみじん切りにして入れてるんです」と笑った。

「そうか。萌の努力があって、ふたりはちゃんと野菜を食べられるんだな」
「おみしゃん、たまご、おいしー?」
「うん、美味しい。ママはお料理が上手だね」
「じょーじゅねぇ」
「陽太はどれが一番好き?」
「ハンバーグとコロッケ!」

陽太はすっかり晴臣に慣れたようで、笑顔で会話をしながら和やかにお弁当を食べている。お弁当箱に残っている半分にカットしたプチトマトを晴臣に食べさせてほしいと、口を「あーん」と開けて甘えるなど、この半日で随分懐いたようだ。

一方、光莉はまだ警戒心が解けていないようで、午前中はずっと萌にべったりくっついていた。

「光莉は? ママのご飯、どれが一番好き?」
「……じぇんぶ」
「うん、全部美味しいね。光莉は野菜から食べたのか、偉いな」

晴臣の言葉に反応はするものの、視線は合わせないままで声も小さい。