「ごめんなさい、今なんて」
「いや、ごめん。会ってすぐにする話じゃなかった。ふたりの準備がまだなら、俺は表で待ってたらいいかな? 近くのパーキングに車を停めてあるんだ」
「車ですか?」
「うん。早めに来て借りておいた。ふたりを連れて出掛けるなら、電車より車の方が動きやすいと思って」

まさか車まで用意してくれているとは思わず、萌は驚いて彼を見つめた。

「あ、もしかしてふたりは電車とかバスに乗りたかった? それなら車は置いておけばいいからそうしよう」
「いえ、違います。新幹線でこっちまで来てくださった上に、わざわざ車まで準備してくれていると思わなかったので、びっくりして」
「秘書に聞いたんだ、小さい子を連れて出掛ける時は荷物が多くて大変だって。双子ならなおさらそうだろうし、車がある方が便利かもしれないと思って一応ね」

晴臣らしい優しい心遣いに胸があたたかくなる。ふたりを思って準備してくれた彼を表で待たせるなんて、とてもできない。

「ありがとうございます。あの、よかったら上がって待っててください。散らかってますけど」
「いいの? じゃあお言葉に甘えて」

萌が晴臣を連れてリビングに戻ると、双子は突然の彼の登場にぽかんとしている。

「だぁれー?」
「この前会ったでしょう? 晴臣さんだよ」
「おみしゃん?」