「よかった。では行きましょうか」

少し迷ったが、萌は晴臣に流されるように頷いて席を立つ。

隣から鋭い視線が向けられているのに気付いていたが、萌にはどうすることもできない。極力そちらを見ないようにしながら、晴臣に続いて個室を出た。


彼とともに向かったのは、東京の真ん中にあることを忘れてしまうほど広大な敷地面積を誇る日本庭園。青々とした木々や花の香りに酔いしれ、自然を堪能できる素晴らしい庭だ。

日本の風土気候に合わせて計算され尽くした芸術とも呼べる日本庭園は、まさにおもてなしの心そのもの。見る者の心を癒やし、落ち着かせてくれる。

枯山水や朱色の太鼓橋など和の趣が結集したような場所で、四季それぞれに違った表情を見せるのだろうと、素人の萌にも感じられた。