あのカフェでのやり取りを思えば、その結論に行き着くのは不思議ではない。奥にいる陽太と光莉を思って小声で尋ねる康平に対し、萌は小さく頷いた。

「……ずっと黙っていて、ごめんなさい」

この国で暮らしていて桐生自動車の名前を聞いたことがない人はいないだろう。そんな大企業の御曹司との子供を無断で生んで育てているなど、とても口にはできなかった。

頭を下げると、康平が萌の肩をぽんぽんとたたいた。

「謝ることじゃないだろ。訳アリだろうとはわかってたしな。桐生さんは萌を追ってここに?」
「ううん。最初は彼も知らなかったみたいで、すごく驚いてた」
「……運命の再会ってやつか。それなら、俺の出番はもうないな」

普段はぶっきらぼうだが張りのある康平の声がやけに淋しげに聞こえ、萌はハッとして顔を上げた。

「康平くんには感謝してる。双子もすごく懐いてるし、とっても助けられたよ。出番がないなんて、そんな」
「そういう意味じゃねぇよ。ニブいとは思ってたけど、こうも気づかないもんか」
「え?」

彼の言う意味がわからずに首をかしげると、康平は「なんでもねぇよ」と苦笑する。