「随分強くなったんだね」
「晴臣さんと、子供たちのおかげです」
「ふたりを見た時は衝撃だった。特に陽太は昔の俺にそっくりだったから」
「驚かせてすみません。まさかあの場に子供たちが来るとは思わなくて」
「……連れてきたのは、田辺社長の息子さんだよね?」
「はい。社長にも康平くんにも双子が生まれる前からお世話になってるので、あの子たちもすごく懐いてて」

康平の名前を出した途端、萌を抱きしめる晴臣の腕の力がぐっと増した。

「再会した日も、あのカフェでも、俺がどれだけ嫉妬したかわかる?」
「え?」
「せっかく萌にもう一度会えたと思ったら、目の前で他の男に掻っ攫われたんだ。それに彼は自分が父親だと名乗った」
「あれは……たぶん私がおろおろしていたのを見て、康平くんが機転を利かせてくれただけで」
「それを汲み取れるくらい親しい関係なのを見せつけられて、気が狂いそうだったよ」

わずかに怒りを孕んだ低い声音は、甘い毒となって萌の身体に染み渡ってくる。

晴臣にとって面白くない状況だと言葉にして伝えられ、申し訳なさと同じくらい、嫉妬するほど自分を想ってくれているのだと実感して頬が熱くなった。

自分といては迷惑になる。そう言って晴臣からの復縁に頷けないでいるくせに、彼の想いを知って嬉しく感じている。

矛盾ばかりで、自分でもどうしたらいいのかわからずに立ち往生している気分だった。