晴臣が真っすぐにこちらを見ていたため、初めて正面からしっかりと目が合う。

失礼のないように事前に調べて知っていたものの、実際に晴臣と近い距離で見つめ合うと、あまりの美貌につい見惚れてしまった。

軽く後ろに流してセットした黒髪に、身体にフィットしたスーツがとてもよく似合っている。睨むような鋭さはないが、断るのは許されないような意思の強さを感じさせる眼差しに、萌はハッと息をのんだ。

「萌さん、このホテルの日本庭園は見たことは?」
「……い、いえ」

萌が控えめに首を横に振ると、晴臣の援護射撃をするように宏一が続けて口を開いた。

「それなら晴臣とゆっくりと見ておいで。桜は散ってしまっているが、今日は天気がいいから眺めもいいだろうしね。我々は先に帰るとしよう」
「秋月社長、萌さんをお借りして構いませんか?」
「え? あ、はい……もちろん」

尋ねられた健二がヘラヘラと愛想笑いを浮かべて了承すると、晴臣は穏やかに微笑んで立ち上がる。