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その週の土曜日。萌は双子を保育園に預け、駅直結の某ホテルへと向かった。

何度も東京から名古屋まで来てもらうのも申し訳ないと思いつつ、電話で済ませられる話でもない。ふたりだけで話せる空間の方がいいだろうと晴臣が部屋を手配してくれたのだ。

待ち合わせは午後一時。朝から仕事をこなしてきたらしく、晴臣はスーツ姿であらわれた。フロントでチェックインを済ませると、エレベーターで客室フロアへ上がる。

階数表示は最上階である五十二階を示していた。まさか話をするためにスイートルームをとっているとは思わず、萌は豪華な内装に圧倒されつつ部屋の奥に進み、ソファに座った。

「お昼は食べた?」
「はい、私は。晴臣さんはまだなんじゃないですか?」
「いや、俺も新幹線の中で食べたから大丈夫。なにか飲み物を頼もうか」

相変わらずの優しい気遣いが嬉しくもあり、それを自分が受け取ることに罪悪感もある。萌が小さく首を横に振ると、晴臣は「わかった」と頷いた。

「時間がないから単刀直入に聞く。この前会った子たちは、俺の子だよね?」

きっと彼の中ではすでに確信しているはずだ。それでも問いかけてくるのは、一体どうしてだろう。