「ひかり、ママ、こーくん」
拙い言葉で一生懸命話す陽太の可愛らしさに晴臣が目を細めた。その姿を見ていると、本来はこうしてたわいないおしゃべりをする権利があるはずなのに、自分の選択が親子の時間を奪ってしまったのだと罪悪感がこみ上げてくる。
「パパは?」
「パパ、うみのあっち」
「……海のあっち?」
陽太の言葉に息をのむ。咄嗟におしゃべりを止めようと「陽太!」と名前を呼んだが、楽しそうに話す彼はニコニコと誇らしげに答えた。
「ぶーぶーちゅくる。かっこいいやちゅ」
その言葉の意味を理解した瞬間、目を見開いて萌に視線を移した。
「萌」
「ちが、あの、今のは……」
慌てて言い訳の言葉を探したが、萌自身ももう否定できないとわかっていた。
「日を改めよう。もう一度、ふたりで話す時間を作れる?」
双子がこの場に来てしまった以上、このまま話をするわけにもいかない。
晴臣の強い眼差しと気迫のこもった言葉に、萌は頷くしかなかった。