本音を言えば、萌だって彼と同じ気持ちだ。康平から双子に新しい父親を作るかと聞かれたこともあるが、あり得ないと断言できる。
光莉と陽太の父親も、萌が心から愛しているのも、目の前の彼しかいない。きっとこの先も気持ちは変わらないだろう。
「謝らないでください」
「萌」
「籠の中の鳥だなんて……囚われていると思ったことなんて一度もありません。あの人たちと晴臣さんが同じなわけがない……っ!」
必死に首を振って思いを伝えると、晴臣もまた苦しそうに眉間に皺を寄せて萌を見つめた。
「じゃあどうしてあの時、俺から離れた?」
「それは……っ」
なにも言葉を紡げずにいると、予期せぬ声が店内に響いた。
「あっ、いたー!」
「ママー!」
ぎょっとして振り返ると、両手に双子を連れた康平がこちらにやって来るところだった。
思わずガタンと大きな音を立てて立ち上がる。
陽太と光莉は嬉しそうに萌に手を振っているが、振り返してあげられる余裕はない。