その萌の表情になにを思ったのか、晴臣はふうっとひとつ大きく息を吐き出すと、姿勢を正してこちらをじっと見据えた。
「萌。もう一度、俺とやり直してくれないか」
あまりの衝撃に声も出ない。お見合いの時の突然のプロポーズにも驚いたが、今はその比ではなかった。
萌がただ固まっていると、晴臣はおもむろに頭を下げた。
「あの時、『ただそばにいればいい』なんて萌を縛り付けるようなことを言って、本当にごめん」
「は、晴臣さんっ!?」
「そばにいてほしいからと俺のエゴを押し付けた。たしかにあの発言は、君をいいように虐げ続けてきた秋月社長たちと同じだ」
彼の言わんとしていることを察し、萌はハッとした。
三年前、ニューヨークへついてきてほしいと指輪を差し出した晴臣に対し、萌は言い放ったのだ。
『叔父一家の次は、あなたに囚われながら生きていかなくてはいけないの……?』
そんなふうに思ったことはないし、誓って本心ではない。
英語も話せず、きっとなんの役にも立たないであろう萌に対し、そばにいてくれればいいと言ってくれた彼の気持ちは飛び上がるほど嬉しかった。
それなのに晴臣から離れなくてはと必死になるあまり、酷い言葉で傷つけた。