彼なりに硬くなっている萌をリラックスさせようとしたのかもしれないが、久しぶりに見た晴臣の笑顔に、胸が締めつけられて苦しくなる。

(やっぱり、陽太と光莉に似てる……。ううん、陽太と光莉が晴臣さんに似てるんだ)

その事実が切なくて、彼を直視できずに目を伏せた。ふたりの天使のような愛らしさは、彼の類まれな美貌を存分に受け継いでいるのだと痛感する。

しばらく互いにドリンクを飲んで沈黙が続いたが、やがて晴臣が口火を切った。

「元気そうで安心したよ。まさか名古屋で再会するなんて思ってもみなくて驚いたけど」

なんと答えるべきか迷い、萌は言葉を発さずに頷くに留めた。

「あのあと、すぐに名古屋に?」
「……はい。田辺社長は父の親友だった人なんです。両親が亡くなったあとも年賀状のやり取りだけは続けていて、なにかあれば頼ってほしいと言ってくれていたので」
「そうだったのか。そのこと、秋月社長たちには?」

萌は静かに首を横に振った。晴臣と同様、叔父一家にも一切連絡を取っていないし、向こうからの接触もない。もうきっと二度と会うことはないだろうが、彼らを家族とは思えないし、それでいいと思っている。