平日の夕方とあって注文カウンターには数組の客が並んでおり、奥のイートインスペースはほとんど満席だ。ぐるりと店内を見回すと、窓側の席で萌を待っている晴臣をすぐに見つけられた。

(相変わらず、すごく目立つ……)

注文したアイスココアを乗せたトレイを持って、周りの注目を一身に浴びている彼の待つテーブルへ行く。すると晴臣は立ち上がり、萌の席の椅子を引いてくれた。その洗練された行動に、周囲の女性たちから湿度の高いため息が漏れ聞こえてくる。

「あ、ありがとうございます」

こうした優しい気遣いに触れるのも三年ぶり。どうしたって胸が高鳴ってしまうのを止められない。

ふと彼の飲み物を見ると、萌と同じアイスココアの上に生クリームがたっぷり乗っていた。

(すごく甘そう。晴臣さん、好みは変わってないんだ)

彼の見た目と味覚のギャップが懐かしく、思わず頬が緩む。

「今、相変わらず甘党だなって思ったろ」
「えっ? 思っ、いました」

否定するのもおかしくて正直に頷くと、晴臣は声を上げて笑った。