晴臣はこのままにはしておけないと萌を自分の家へ連れ帰り、強引に同居生活へと持ち込んだ。

見合いで出会ったその日から同居というスピードに戸惑ってはいたものの、それでも受け入れたのは余程あの家から出たかったに違いない。

萌は長い間虐げられて育ったせいで自己肯定感が低く、自分の意思や意見を言うのが極端に苦手だった。

晴臣は「私なんか」と卑下する萌を諌めると、一緒に過ごす中でなにをするにも萌に意見を求め、彼女の人となりや考えを知ろうとした。

彼女の本来の姿は、優しく聡明で、思いやりに満ちた人柄なのだろう。

萎縮していた態度も少しずつ緩和され、萌は徐々に晴臣に心を許し始め、笑顔を見せるようになった。

少しずつ自尊心と健康を取り戻した萌は、晴臣の目に眩しいほどに美しく、そして可愛らしく映る。

一緒のベッドで寝ようと誘ったのは、緊張で身を硬くする萌に少しでも早く自分に慣れてほしかったからだ。

中学の頃からあの家で生活していた萌に恋愛をする余裕があったとは思えないし、そんな彼女に対してすぐにどうこうしようと下心を抱いていたわけではない。

それなのに、照れながらも真っすぐな眼差しで『恥ずかしいし緊張しますけど、頑張りたいです』と言われ、思わず一緒になって照れてしまった。