胸に手をあてて深呼吸を繰り返し、なんとか冷静さを取り戻す。

「萌? どうかしたか?」
「あっ、ううん。なんでもないよ」
「……ならいいけど。そういや、光莉と陽太は新しいクラスに馴染んだのか?」

康平が話題を変えてくれたため、萌はなんとかぎこちない笑顔で頷いた。やはり萌にとって双子がなにより大切で、ふたりのことを思うだけで心が穏やかになる。

「うん。もう新しいお友達ができたみたい。去年はあんなに泣いてたのに、子供って成長が早くてビックリする」

この四月から二歳児クラスに進級した双子は、今でこそ楽しく保育園に通っているが、最初は人見知りも場所見知りもひどくて保育園に連れて行くのも一苦労だった。

父親はいなくても、ひとりで立派に育ててみせる。そう意気込んでいたものの、双子の育児は想像以上に過酷だった。

初めての出産ではひとり育てるだけでも大変だが、ふたりいれば当然二倍の労力が必要となる。

おむつを替えるのもミルクを飲ませるのもふたり分。寝かしつけは陽太が眠ったと思っても光莉が泣けば陽太も目を覚まして泣くし、反対もまた然り。

帝王切開の傷が癒えぬまま、首の据わっていない新生児を代わる代わる抱っこして部屋中を歩き回っていると、いつの間にか一日が終わっている。