「うん。今日も海のずっと向こうでカッコいいぶーぶーを作ってるよ。光莉は? なにを書くの?」
「ひかりもぶーぶーかく! かわいいの」
「そっか。かわいいぶーぶーもいいね。どんな色かな?」
「ぴんくー」
「よーた、あおしゅき!」
「ひかり、きいろもー」

すぐに父親の話から好きな色の話題に移りホッとする。萌は無意識に胸元のネックレスを握った。

陽太と光莉は生まれてからずっと萌と三人で暮らしているため、父親が一緒に暮らしていない事実に疑問を覚えていない。

それでも保育園で『パパ』という存在を知り、『ひかりとよーたのパパは?』と聞かれた時は、胸が締め付けられる思いだった。

父親については『かっこいい車を作るお仕事をしている。でも遠い海の向こうにいるから会えない』と伝えている。今はそれで納得している様子だが、いつまでも通用しないのは萌も自覚していた。

いずれきちんと説明しなくてはならないと思いつつ、萌自身もどう話したらいいか考えが纏まっていない。まだ双子は二歳になったばかりだし、きっと理解するには難しいだろう。そう考え、つい先延ばしにしてしまっている。