次の予定があるからと梨穂と別れた私は、そのまま大通りを歩くことにした。

「わあ……」

 このドレス……すごく可愛いな。

 見つけたのは、すごく美しくて可愛いウェディングドレスだった。
 私ももしかしたら、椿とこんなにキレイなウェディングドレス……着ていたのかな。なんて思ってしまう。

 椿の意思を尊重して別れたとはいえ、私のことを愛してくれていたのかは、分からない。
 男の人が好きだという椿にとって、実は私は重荷だったのではないか……と思ってしまう。
 私は椿のことが大好きだったし、これからの未来を一緒に創ることが出来ることが何より嬉しくて、幸せだと思えた。

 椿が笑ってくれていた時も、椿が幸せだったと勝手に思っていたし、何より同じ気持ちだったと思いこんでしまっていたことが、椿を苦しめていたのではないか。
 今思うと、私は椿のことを何も分かっていなかったんだなと思った。 分かっていなかったのに、分かっているフリをしていただけに過ぎなかった。

 ガラス越しに見えるウェディングドレスを眺めていると、それに気付いた店員さんと目が合った。
 私は思わず目を逸らしてしまい、その場から離れるように歩き出した。

「はあ……」

 椿……今頃どうしているのだろうか。 好きな人と、幸せにやっているのかな。