アイスティーを飲みながら、私は「そうだね。しばらくは、気ままに生きていこうかなあ」なんて口にしてみる。
「ま、フリーになった訳だし、そのうちいい人が現れるかもしれないよ?」
「そうかなあ」
ま、しばらく傷は癒えないのは本当のことだし、しばらくはおひとり様を楽しむことにしよう。
「ねえ、梨穂」
「ん?」
私は梨穂に「婚約者のカミングアウトを、簡単に受け入れた私って……おかしいのかな」と告げた。
「おかしくないよ、美耶子。……美耶子は、椿くんのために別れることを選んだんでしょ?」
「……うん」
「それは立派なことだよ。 簡単に受け入れられる訳がないもん。……椿くんが幸せになれるかもしれないって思って別れたんだから、それはきっと正解だよ」
梨穂にそう言われると、なんだかホッとした。
「ありがとう、梨穂」
アイスティーを飲む私に、「美耶子は強いよ」と梨穂は言ってくれる。
「そうかな?」
「うん、立派だよ」
私は正直、今はとても辛い。椿のことを忘れることに、少し時間がかかる。
それでも私が選んだ人だったから、幸せだったから、出来れば椿には幸せになってほしい。
「私も正直、受け入れられるのに時間はかかるけど……でも、椿には幸せになってほしい」
「優しいね、美耶子は。 優しすぎるくらいだよ」