「え……?」

 片霧先生は、歩きながら私に「お前がいなかったら、あの患者は助けることが出来なかった。お前のおかげだ」と微笑みを見せる。

「いえ、私は何も……」

 まさか、そんなにお礼を言われるとは、思ってもなかった。
 実際に助けたのは、片霧先生な訳だし。 私は、何もしていない。

「まあ、素人の割にはよく出来てたよ」

「それは、どうも」

 そのまま百貨店に着くと、私と片霧先生はジャケットを買うためにそのお店に向かった。

「で、どれだ?」
 
 目的のお店で、ジャケットがないかを探してみる。

「んー……もうないかもしれないです」

「そうか。ないか」

 あれ結構気にいってたけど、やっぱりないか。まああれ確かに、二年前くらいに買ったものだし。
 流石に……ないか。

「おい、これなんかどうだ?」

「え?」

 見せられたジャケットは、私が気に入っているものは違うけど、素材は似ていた。

「着てみろ」

「は、はい」

 とりあえず鏡の前で、渡されたジャケットを試着してみる。

「ど、どうですか……?」

「まあまあだな」

 まあまあ……ですか。 それって、似合ってるってことなの?

「これも着てみろ」

「は、はい」

 言われるがまま、二着目のジャケットを試着してみる。

「どう……ですか?」

「ん、普通だな」

 ふ、普通……ですか。