片霧先生は「ならその百貨店にでも行くぞ」と、歩き出す。
「でも、今はあるか分かりませんけど……」
「ないならないで、別に違うものにすればいいだろ」
「は、はい」
もう、なんなの? 優しいのか、優しくないのか分からない。
この人は悪魔なんだよね? 悪魔の、天才外科医なんだよね?
優しいと思えるような、ないような……。
「あの……片霧先生は、どうしてあそこにいたんですか?」
「は?」
「さっきですよ。……なんで、あそこに?」
片霧先生は「はあ……」とため息を吐くと、「俺も出勤途中だったんだよ」と答える。
「そうなんですね」
「で、お前はなんであそこにいたんだよ」
今度はそう質問され、「私は、病院に行く途中だったんです」と答える。
「そうか。 で、ナイフで刺されてる人を見つけたってか」
「は、はい」
「つくづく運のないヤツだな。……でもお前のおかげで、あの人は無事に助かった。 後五分発見が遅かったら、あの人は多分、助からなかっただろうな」
そう言われて思わず、ちょっとドキッとしてしまった。
「……良かったです。役に立てて」
「すぐに処置が出来たおかけで、あの患者は助かった。 まあ、俺の腕がいいんだけどな」
「そ、そうですか」
この人はナルシスト、なの……?
「まあ、俺一人じゃ無理だっただろうな」