私は片霧先生の隣に行くと、「あのジャケット、とてもお気に入りのなんです。本当に高かったんですから」と言うと、片霧先生は「知るか、そんなこと。俺には関係ねえし」と冷たくあしらう。

「ひどいです」

「はあ?」

「弁償してください!」

 あのジャケットを奮発して買ったものなんだから、なんとかしてくれないと困る……とは思ったけど、そんなことを言っても仕方ないか。

「……はあ、もういいです」

 あまりにもショックすぎて、どうしようもない。

「帰ります」

 帰ろうとした時、片霧先生が「おい、待て」と私を呼び止める。
 
「はい?」

「分かった。弁償してやる」

「……はい?」

 弁償……ですと?

「弁償してやるって言ってるんだよ、バカ」

「え……どうしてですか?」

 まさか、急に気が変わったとか?

「弁償しろと言ったのは、お前だろう」

「で、ですけど……」

「なんだ。 行くのか?行かないのか?」

 そう聞かれて私は、「い……いいんですか?」と問いかける。

「早くしろ。俺の気が変わらないうちに、行くのか?行かないのか?」

 私は「い、行きます……!」と返事をした。

「おい、早くしろ。日が暮れるだろ」

「は、はい!」

 私は慌てて片霧先生の後を追う。

「で、その店はどこにあるんだ?」

「百貨店の中です」