「今までずっと言えなくて、ごめん」

「……そっか。じゃあ私のことは、もう愛してないってこと……だよね?」

 私がそう言うと、椿は「……ごめん、本当に」とだけ言った。
 私は少しだけ考えて「ううん。……話してくれて、ありがとう」と笑った。

「美耶子のこと……裏切るようなことをして、本当に申し訳ないと思ってる」

「……ううん」

「美耶子のことを幸せにしたいと思ったのは、本当なんだ。 でも……俺にはずっと、美耶子のことを幸せにする自信がなかった」

 椿は私に対して、申し訳なさそうな表情をしている。

「椿……私の方こそ、ごめんね」

「え……?」

 私は椿に「私の方こそ、気付いてあげられなくて……ごめんね、椿」と椿の手を握った。

「美耶子……」

「あなたの苦しみを気付くことが出来なかった私は、婚約者失格だね。……ごめんね、椿」

 椿がカミングアウトしたことで、私は椿の苦しみを分かってあげられないことが、苦しいとさえ思った。

「美耶子……君は優しすぎるんだ」
 
「そんなことない。……私は、椿のことを愛してるから、椿の苦しみを分かってあげられなかったことが悔しいよ」

 椿のことを愛しているからこそ、私は身を引かなければならない。
 そう感じてしまって、椿は孤独を感じていたのかなって思ってしまった。