タオルを素早く受け取った片霧先生は、慣れた手つきで止血作業を進めていく。
 
「おい、水持ってるか?」

「は、はい!」

 お水のペットボトルを先生に渡すと、先生は「まだ足りない。水を買ってこい!」と再び私に指示を出す。

「わ、わかりました!」

 すぐ隣のコンビニでお水を数本買い、再び片霧先生に渡した。
 
「先生!お水です!」

「そこに置け!」

「は、はい!」
 
 すると片霧先生は、私に「素人は危ないから下がってろ!」と私を後ろに下がらせた。

「は、はいっ」

 こ、怖い! 怖いよ!

 止血をする片霧先生のその後ろ姿を見て、やっぱりこの人は天才外科医なんだと心底感じた。
 処置をするその手つきはまるでマジックみたいで、千手観音みたいに素早く処置をしていた。
 時々、患者さんに「大丈夫ですか?」や「ちょっと痛みますけど、我慢してくださいねー」などと声をかけていた。

「まずい。心拍数下がってるな……脈が弱い」

「あ、あの……」

「おい、そこのお前」

「は、はい?」

 片霧先生は、私が着ているジャケットに視線を向けると、「お前のそのジャケット、貸せ」と私を見る。

「えっ!?」

 これ!? 私のお気に入りなのに!?

「患者の身体を固定したい。 いいから、貸せ!」

「は、はい!」

 私はすぐにジャケットを脱ぎ、片霧先生に渡した。