患者を……生かす?

「まあ俺は、患者を生かすって考え方自体、好きじゃないけど」

「そうなんですか……」

「でもあの人の手術は、完璧なんだよ。ミスなんて一つもない。 あの人の腕は確かだ。だから片霧先生は、天才外科医なんだよ」

 悪魔だけど、天才外科医……。

「それじゃ、新薬断れますよね……」

「まあまあ、そんなに落ち込まないでね、美耶子ちゃん。片霧先生はああいう人だから」

 栗本先生から頭をポンポンとされ、私は「はい」と返事をした。

「せっかくだから、新薬のパンフレット、もらっておくよ。内科に渡しておく」

「あ、はい。ありがとうございます」

 新薬の情報が書かれたパンフレットを渡し、私はその場を「じゃあ、私はこれで失礼します」と後にした。

「悪魔の……天才外科医か」

 天才外科医と呼ばれるくらいだから、相当腕がいいんだろうな。
 でも口が悪いのは……ちょっとイヤだけど。

 片霧先生のウワサは、病院内ではよく聞いていた。 実際に片霧先生に手術してもらって、完治した人もいるらしい。
 どれほど難しい手術でも、成功させてしまうほどの腕の持ち主ということもあり、結果的に患者は片霧先生の手術を望むらしい。
  
 今では片霧先生の手術には、順番待ちが出来ているらしいから、それほどまでに彼は、本当に天才外科医だということだ。