栗本先生からそう言われて、私は思わず「えっ! そうですか?」と言ってしまった。
私って……そんなに分かりやすい、のかな?
「片霧先生には、あまり近寄らない方がいいよ?美耶子ちゃん」
栗本先生からそう言われて、私は「え? どうしてですか?」と聞き返してしまう。
「あれ、知らないの?美耶子ちゃん? あの人、悪魔って呼ばれてるの」
「知ってます。早崎から聞きました」
悪魔……ね。
「片霧先生に新薬を売り込もうなんて、考えない方がいいよ。 あの人は、手術のことだけしか頭にない人だから」
「え……?」
栗本先生は缶コーヒーのプルタブを開けると、コーヒーを一口口にして「あの人は、自分の腕しか信じてない。 患者に対しても口が悪くて、患者の不安を煽るようなことばかりを言う人だから。 でもそれでも、患者は最後に必ず、同意書にサインをするんだ」と私に言う。
「なのにどうして……患者さんは、同意書にサインをするんですか?」
「決まってるよ。 片霧先生は、手術を失敗しないからさ」
手術を……失敗しない、か。
確かにさっき、片霧先生も言っていた。 外科医は腕が命だと。
先生は天才外科医だと言われているだけあって、片霧先生は腕がいいんだ。
「片霧先生は、よく言ってるよ。 俺の腕は、患者を生かすことが出来る……ってね」