そんな冷たい言い方をされたら、何も言い返せなくなる。

「いいか?よく聞け」

「は、はい……?」

 片霧さんは、私に「外科医ってのは、腕が命なんだよ。腕がなきゃ外科医は出来ないし、患者の命を助けることすら出来ないんだよ。……俺は自分の腕で、患者の命を助けることが外科医の役目だと思ってる。 そんな完璧なのかも分からない薬で人の命が救えるなんて、到底思えないんだよ」と冷たい言葉を放っていく。

「アンタらも製薬会社だから、新薬を売り込みたいのは分かる。 でもその新薬を売り込みたいなら、手術を専門としない内科にでも行け」

 シッシッと追い払われた私は、その場を後にするしかなかった。
  
 何も、あんな言い方をしなくてもいいのに……。

「あれ、美耶子ちゃんじゃん!」

「あ……栗本先生」

 栗本さんは小児科の先生で、私たちとも昔から繋がりがある。
 新薬のことも検討してくれて、何個か取り入れてくれたりはしている。

「どうしたの?美耶子ちゃん。なんか元気ないね?」

「ちょっと……新薬の話を出したら、すごく機嫌が悪くなった先生がいて」

 私がそれを話すと、栗本先生は「それってもしかして、片霧先生のこと?」と聞き返してくる。

「やっぱりね。そうだと思った」

「なんで分かったんですか?」

「え? だって美耶子ちゃん、分かりやすいもん」