そう話して片霧さんの顔を見た私は、その顔を見て驚いた。

「えっ……?」

 あれ?この人……? どこかで見たような顔……。
 最近、どこかで会ったことがあるような気がする。 でも、どこで会ったかな……?

「……なんだ。俺の顔に何か付いてるのか?」

「あ、いえ。……あの。私たち、どこかで会ったこと……ありましたっけ?」

 そう聞くと、片霧さんは「は? ある訳ないだろ」と答えた。

「で、ですよね……」

 でもでも……。この前、どこかで会ったことあると思うんだよね。
 でもそれが、どこなのかが分からない。

「……で? 新薬がなんだって?」

「ですから……こちらの新薬を取り入れてもらいたいという、お話なんですが……」
 
 片霧さんは「あのな、俺は外科医だ。だから、新薬なんてものには頼らないんだよ。……そもそも、俺は外科医なんだから、頼るのは自分の゙腕゙だけだ」と私を睨みながら言ってくる。

「えっ……でも、この新薬なら手術をしなくても、良くなる可能性が……」

 片霧さんは私の言葉を再び遮るように、「それは本当に、完璧な薬なのか?」と私を見る。

「え……?」

「俺の外科医として、患者の病気を完璧に治すことが出来る。 そんな薬に頼らなくても、俺は自分自身の手で患者を助けることが出来る。……そんなものに頼る必要が、どこにある」