……今なんて？
私は、時間を奪われたみたいに固まってしまった。
だってそんなこと、言われるなんて思ってなくて……。
──というか。
「いいの？」
「……変に広まってるから、急に別れたとか説明大変だって心配してんだろ？」
「えっ、と」
そ、それはちょっと違うのですが……。
だけど私欲のためですなんて言えるはずもなく。
視線を左右に動かし言葉を探していると、もうひとつ小さな声が耳に届いた。
「しばらくしたらほとぼりも冷めるから……心配すんな」
「……彗」
いつもそうだ。
なんだかんだ言って、彗は自分のことより私のことを優先してくれるよね。
「彗ってさ、ほんと優しいよね」
「……別に」
「優しいよ」
……だって、さっきも。
先輩に証拠を見せるためだからって、もう少しでキス……しちゃうところだったよ？
『なになに〜結構いい感じじゃない』
樹里の言葉を鵜呑みにするわけじゃないけど。
そんなに優しくされたら、勘違いしちゃうよ、私──。
