複雑なのはどうしようもない。

大好きな彗を巻き込んで、せっかく女の子たちの鋭い目にも耐えたのに……って。


「ああっ!」


そうだ、それより大事なことがあった!

ふと思い出した私は、急いで彗の腕を引っ張る。


「恋人のフリは……?」


すっかり忘れていたけれど、先輩の件が終わった今、いつまでも彗を縛っておく理由はもうなくなってしまったんだ。

……寂しけど、これでもう。


「もう、おしまい……ってこと?」


何故か滲んだ瞳。

見られたくなくて、斜めに逸らして言った。


「みなみはどうしたい?」

「っ」


すると、すぐに頭の上に降ってきた声。

逸らしたままの視線が揺れる。


……私は──。


「俺は、暫く続けてもいいけど」

「えっ」