「なになに〜結構いい感じじゃない」

「……そう、かなぁ?」

「そうよそうよ。私たち邪魔しないから、二人でちゃんと帰ってね!」


彗の姿が教室に消えると、樹里と美月が目を輝かせて近づいてきた。


「あの口から好きって吐かせられなかったのはちょっと残念だったけどね」

「ホント! またチャレンジしないと」

「はは、彗はそんなこと……」


言ってくれる、かな?

もし言ってくれたとしても、きっとそれは本心じゃなくて〝彼氏〟として。

偽るための嘘なんだろうけど。


……ちょっと聞いてみたかったな。なんて、思ったりして。


「みなみ?」

「っ! ううん、何でも。教室帰ろ?」


きゅっと口の端を結び上げると、私は樹里と美月の腕を引っ張って歩き出した。

小さく感じた胸のざわめきをかき消すように。