「……なに笑ってんの」


ニヤけが止まらない!

突然覗き込んできた彗に、私は急いで緩んだ表情筋を引き締める。


「んー、なんでもないよ」


ごまかすように言ってはみるけど、なんでもないわけないじゃない。

だって、フリでも好きな人の……彗の彼女になっちゃったんだよ、私。


そんなの、夢みたいなんだもん。


「彗、ありがとう」

「……別に」


笑いかけたらそっぽを向いてしまった彗は、相変わらずつれない。


でも断ることだって簡単なのに。

最終的にはこうやって私のわがままに付き合ってくれて彼氏のフリまでしてくれて……。


……やっぱり、大好き。


幸せ気分に浸っていたら、いつの間にか学校までたどり着いていた。