「付き合ってんだから好きに決まってるよなぁー?」


頭を抱えた時、少し離れたところで聞こえてきたその声。

どうやらそれは、佐渡くんの声だったみたい。


「ね、彗?」


ニヤリ、こっちまでやってきた佐渡くんが愉しそうな顔をして彗を見た。


「てかみなみちゃん。彗にヒドイことされてない? されたら俺に言うんだよ」

「えっ……と、それは、大丈夫かな。彗すっごく優しいし」

「ふーん、この彗くんがねえ。みなみちゃんのお友達ちゃんたち、聞いた?」

「ええ。この耳でしっかりと」


……え。もしかして私、余計なこと言った?

ニヤニヤと良くない顔をする3人に見つめられ、逃げ場を失う。


ホントどうしよう。何か言わなきゃ。

そう思った時。


「話ってそれだけ? じゃ」


表情一つ崩すことなくそう言った彗が、ポケットに手を突っ込み教室に向かって歩き出した。