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「ねー、みなみちゃん市ヶ谷くんと付き合ってるってほんと!?」


ぎょっ。


教室に入るなり5人くらいの女の子たちに囲まれ、ビクッと身体が跳ねた。


「さっき手繋いでるの見たよ〜」

「私もー!」

「ねぇ〜、どうなのー?」


ずいっと詰め寄ってくる彼女たちに、私はそろりと「実はね」と答える。


途端にきゃあっと上がった黄色い声に、私は内心拳を握りしめた。


……ひとまず作戦順調……よね?


結局、彗が手を離してくれたのは教室に着く直前で。

それまでずっと恋人繋ぎ。

こうやって彗との関係が公になるなら、女の子たちからの視線をぐさぐさ浴びながら廊下を歩いた甲斐がある。


……うん。あるのだけど。


「いーなぁ、市ヶ谷くん。クールで大人っぽくて、あたし気になってたのにぃ」

「それな。ってか市ヶ谷彼女作んないと思ってたし」

「……あ、そもそもみなみちゃん幼なじみなんだっけ?」

「どっちから告ったのー?」


いつの間にかギャラリーも増えてるし。

さすがにこんなに質問攻めされては、困ってしまうよね。


……えっと、その。

どうする私?


じわり額に汗が滲みだした、ちょうどその時。