……楽しかったなぁ。


今なら実体験物語だって書けそうよ?

〝幼なじみとデートしてみたら想像以上にドキドキしちゃった件〟

とかね。


そんなくだらないことを考えていると。


「……別に。それよりなにか掴めた?」


じっと見つめていた横顔が、正面を向いた。


「うんっ。なんとなくだけど」

「そ。ならよかった」

「彗のおかげだねー」


ふふっと上機嫌でそう言う。


正直、彗がここまで協力してくれるとは思ってなかった。

それが実際には、色々と作戦を考えてくれてデートまでしてくれて……。


「じゃあ」


と、突然そんな呟きが耳に届いた。

え?

と首を捻った私に落とされたのは、不敵な瞳で。


「ここからは実戦ってことで」


ぎゅっ。

不意に繋がれた手に、鼓動が跳ねた。


「……うん」


……どうしよう。

こんなのただの作戦だってわかってるのに、初めてでもないのに。


手の感覚がなくなって、意識さえもどこかへ飛んでいってしまいそうだ。