「ねぇ、彗」


……あんな彗、初めて見た。

私が知らない彗だった。


彼女には、そんな顔しちゃうの……?



「……なに?」

「私も練習!」


っていうのは、口実で。

勝手に想像の彼女に嫉妬したのは、内緒の話。


ぎゅうっと前からしがみついて、醜い感情を埋めるように力を込める。


「好きぃ」

「ふは、名演技じゃん」


本当なのに。

これも練習だって思ってるのね。


……とか言いながら、だから私も言えたんだけど。


「……彗、おっきくなったね」

「みなみが小さいんだよ」



──それから色々試した。


見つめあってみたり。

ぎゅっと寄り添ってみたり。


自分から何かをしかけるのはそんなに苦じゃないのに、彗から来られるのはやっぱりまだ慣れなくて恥ずかしい。

それでも何回も触れる度に、少しずつ慣れてきたような、そんな気がしてる。