「……なんてな」

「……え?」


咄嗟にぎゅっと閉じていた目を開けると、いつの間にか彗がベッドに座っていた。


「なにもしねぇから、安心しろ」


そう言って、腰を抜かした私を元の体勢へと戻してくれる。


「えっと……」


なんていうか、拍子抜け?

というのでしょうか。


ちょっと期待してしまった自分が恥ずかしい。



「……で? 少しは俺のこと彼氏に見えた?」

「それは……うん」


正直、何が起こってるのか不思議な気分だった。

意外と強引だし、ドキドキさせられっぱなしだったし。

恋人って、こんなことしちゃうのって未知の世界に迷い込んだみたいだった。


だけど今までにないくらい近いその距離に翻弄される中、私は考えちゃったんだ。


向けられる熱っぽい視線が、

囁かれる鼻にかかったような甘い声が、

全部全部、私だけのものになればいいのにって。