──それはつい昨日の出来事。

休み時間にいきなり後ろから声をかけられ、振り返った瞬間。


『栢野さん、そろそろ俺と付き合ってくれる気になった?』


なんて、聞こえてきた言葉がきっかけだった。

きっかけって言っても、この三年生の先輩──井手(いで)先輩から告白されたのはもうこれで7回目。

どうやら私に一目惚れしてくれたみたいなんだけど。


『好きな人いるの?』

『えっと、はい』

『もしや、付き合ってたり』

『やっ』

『彼氏いないなら、俺にもチャンスあるよね?』


何度断っても、日に日にエスカレートして行くばかりで。

つい、

『彼氏がいるんです』

と嘘をついてしまったんだ。