「みなみ、痛い」


鼻歌交じりにご機嫌で歩いてたら、耳に冷たい声がして目が覚めた。

ふーん。

私にぎゅっとしがみつかれてるのがそんなに嫌なのね?

……そうとわかれば。


「これならいい?」


はいはい離れますよーなんて意地でも言ってやらない。

代わりにちょっと緩めるだけ。

でもそれぐらいなら、許してよね?


「……それより、結局俺はどうすればいいの」


あっそうだ、一大事なんだった私。


「だからね、さっき言った通り〝私の彼氏のフリ〟をしてもらいたいんだけど……」

「……フリ、ね」

「そんな嫌な顔しないでよ」


彗は〝私の彼氏〟なんて不服かもしれないけどさぁ。

見るからに〝面倒です〟みたいな顔されたら傷つくじゃん。

それに、ちゃんとした理由だってあるんだから。