──ガラッ。


彗との旅行に思いを馳せていると、現実世界に引き戻されるようにドアが開いた。


続々と席に戻る生徒たち。

教卓の前に立った先生が、淡々と連絡事項を述べていく。

もうすぐ夏休み……ということで、課題の説明なんかもされた。


そして、4時間目までの短縮授業も終わり、気付けばもう帰りの時間。


掃除当番を済ませ、急ぎ足で待ち合わせ場所の靴箱に向かう。


あ、彗!

とその姿を見つけた私は、すぐに駆け寄ろうとした……んだけど。


「え〜彗、彼女ちゃん待ってるんだ〜」


そんな女の子の声が聞こえてきて、足が止まった。

身を隠すように廊下の壁に寄り添う。


「ちゃんと大切にしてあげなよ」

「相手の子、本気になってから振るとか絶対悲しむからね」

「「ねー」」


なんの話しをしてるのかと思えば。

……私のこと?


今までこんな現場は何度も見てきたけど、今回ばかりは緊張してしまう。


彗は、なんて答えるんだろう。

聞きたいような、聞きたくないような……。


「大丈夫。俺のが本気だから」


──え。