「もう、みんな恥ずかしいからやめてよ……」


一人取り残された私は、そわそわと抗議の声を上げる。

しかし美月と樹里のキラキラとした眼差しは、教室に到着するまでずっと彗に注がれ続けていた。



「ごめん、みなみ。あたし市ヶ谷くんのこと勘違いしてたわ」

「でしょ〜?」


席に座るなり、意外といい人じゃない!

なんて目を輝かせながら言った樹里に、うんうんと賛同する。


ここまでの道のりが長がったからか、私は彗が褒められるのが嬉しくてたまらないんだ。


「あたしも久々に運命の相手でも探してみようかしら」

「「え?」」


と、いきなり落とされた声に美月と声が被った。

だってまさか、〝恋はしばらくお休みするの〟とか言ってた樹里からそんな言葉が聞けるなんて……。


ふふんと愉しそうに笑う樹里は、なんと今日から狙うらしい。

玉の輿というやつを。

樹里らしいと言えば樹里らしい、のかな?


その隣でいつものように控えめに笑みを見せる美月は、この夏休みに彼氏と旅行の予定が決まってるんだって。

それもお泊まりでとか。羨ましすぎるよ〜。